我々の今回の研究は、気管支喘息などのアレルギー性気道炎症において肥満細胞がどのようにして気道粘膜に集簇してくるのかを、培養した気道上皮細胞、線維芽細胞および血管内皮細胞から放出される肥満細胞遊走活性を測定することで検討するものである。このうち、気道上皮細胞からの肥満細胞遊走因子はすでにフィブロネクチンであることを同定した。今年度の主たる研究結果は、(1)培養線維芽細胞から肥満細胞に対する遊走活性物質が放出されることを確立したことと、(2)ウシ肺動脈からのプロテアーゼ法による血管内皮細胞培養法を確立したこと、の二つである。 (1)線維芽細胞からの肥満細胞遊走活性物質の放出 ヒト胎児肺二倍体線維芽細胞株であるHFL-1細胞をコンフルエントにまで培養した後無血清の培養上清を採取した。この培養上清中の肥満細胞遊走活性を、ラット肥満細胞株であるRBL-2H3細胞を標的細胞として測定した。この結果HFL-1細胞から肥満細胞遊走活性物質が放出されていることが確認された。現在この遊走活性物質を精製中であるが、フィルターによる濃縮実験により、この遊走活性物質が分子量3万以上の高分子であることが判明した。 (2)正常ウシ肺動脈からの血管内皮細胞培養法の確立 我々は、正常細胞としての血管内皮細胞を取得するために、ウシ気道上皮細胞を培養する際と同様のプロテアーゼ法にて新鮮なウシ肺動脈より表層細胞を単離し、これを培養することに成功した。この培養細胞が血管内皮細胞であることを、病理学者の協力を得ながら検討し、その結果、この細胞が電子顕微鏡てきに内皮細胞の特徴を持ち、また、免疫抗体染色により第8因子陽性であり、純度の高い血管内皮細胞であることを確認した。今後この細胞の培養上清中の肥満細胞遊走活性を測定する予定である。
|