サルコイドーシスの慢性化・難治化に関する病態生理学的研究:病勢の指標と予後の指標についての検討

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08670661
• 研究種目: 基盤研究(C)
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 長井 苑子 京都大学, 胸部疾患研究所, 助教授 (30217955)
• 研究分担者: 佐竹 範夫 京都大学, 胸部疾患研究所, 助手 (50252515) ; 三尾 直士 京都大学, 胸部疾患研究所, 助手 (90243097)
• キーワード: サルコイドーシス / 慢性化 / 難治化 / イオン化カルシウム / 活性型ビタミンD / ACE / マクロファージ / Tリンパ球

研究概要

サルコイドーシスの慢性化、難治化についての臨床的認識が、長期経過観察の中から、明らかにされてきた。いくつかの予後に関連する指標として、発症時年齢、胸部X線上の病期、肺外病変、過去のステロイド投与歴などが抽出されてきた。これらは、必ずしも、現在の病勢の指標と一致するものではない。しかし、病勢の指標のうち、ACE,活性型vitamineD,イオン化Caは、肉芽腫形成に関連して重要な病態生理学的意義を有する。
本研究では、これらの指標について、年齢、性別、臨床病期、肺外病変、ステロイド治療との関連を検討し、病態、予後との関連を詳細に検討した。結果として、男性症例においては、活性型vitamineDは、イオン化CaやACE、肺外病変と正の相関を示し、全身の肉芽腫病変の量を反映している可能性が明らかにされた。女性症例では、そのような明瞭な関連性は認められなかった。現在、病理組織標本および気管支肺胞洗浄液中の活性型vitamineDは、イオン化CaやACEの測定の検討中である。加えて、気管支肺胞洗浄液中のIL-1とIL-1receptor antagonistの比が測定後、病変の慢性化の指標として位置付けられたが、このサイトカインと調節物質の不均衡と、活性型vitamineD、イオン化Caの量との関連の検討から、慢性化から難治化への予後に関連する因子について明らかにしようと検討中である。というのは、サルコイドーシス症例の難治化症例の治療は、きわめて困難であるので、慢性化の時期に進展防止可能かどうかの検討が、今後の最も重要な課題である。

研究成果

• [文献書誌] Takeyama M,et al: "Substance P-like Immunoreactive Substance in Bronchoalveolar Lavage Fluids from patients with Idiopathic Pulmonary Fibrosis and Pulmonary Sarcoidosis" Sarcoidosis Vasculitis and Diffuse Lung Diseases. 13. 33-37 (1996)
• [文献書誌] Esin S,et al: "Different Percentages of Peripheral Blood γδ^+ T Cells in Healthy Individuals from Different Areas of the World" Scand J.Immunol. 43. 593-596 (1996)
• [文献書誌] Nagai S,et al: "Bronchiolitis Obliterans with Organizing Pneumonia" Current Opinion in Pulmonary Medicine. 2. 419-423 (1996)
• [文献書誌] Nagai S,et al: "Pulmonary Sarcoidosis:Population Differences and Pathophysiology" Southern Medical Journal. 88(10). 1001-1010 (1995)
• [文献書誌] Nagai S.: "Pulmonary Sarcoidosis:Pathogenesis and Population Differences" Internal Medicine. 34(9). 833-838 (1995)
• [文献書誌] Nagai S,et al: "Pulmonary and Critical Care Medicine" Sarcoidosis, 3,000 (1997)