研究概要 |
特発性肺線維症(IPF)の肺線維化病変内の平滑筋増生の程度が強い程、生検までの有症状の期間が有意に長く、肺生検後の2年生存率が悪い傾向のあることを見い出したため今回の課題で研究を行った。 (1)肺線維化病変内の平滑筋増生の程度と抗PDGFモノクローナル抗体陽性細胞との関連についての研究:IPFの肺線維化病変内の平滑筋増生の弱い(A群)9例と強い(B群)9例について抗PGDF-AA,-BBモノクローナル抗体を用いて免疫組織染色を行い、Aschcroftの線維化指数で除した数値で単位線維化病変内の抗PDGF抗体陽性細胞の多寡を検討した所、抗PDGF-AAモノクローナル抗体陽性細胞数はA群とB群で有意差を示さなかったが(3.5±1.6対4.6±3.0)、抗PDGF-BBモノクローナル抗体陽性細胞数は有意の差を示してB群で線維化病変内に陽性細胞数が多く認められた(2.0±0.9対4.6±2.0)。 (2)線維化病変内の抗PDGF-BBモノクローナル抗体陽性細胞の由来に関する研究:IPFの外科的肺生検標本を用いてA群、B群各7例についてパラフィンブロックからmirror imageの方法で切片を作成した後、抗PDGF-BBモノクローナル抗体と抗CD68モノクローナル抗体を用いて免疫組織染色を行い、2群合わせて線維化病変内の抗PDGF-BBモノクローナル抗体陽性細胞361個、抗CD68抗体陽性細胞695個を対象として検討し、線維化病変内の抗CD68抗体陽性細胞の内、32.8%が抗PDGF-BBモノクローナル抗体陽性細胞であり、一方、線維化病変内の抗PDGF-BBモノクローナル抗体陽性細胞の内63.1%が抗CD68抗体陽性細胞であり、A,Bの2群間には差を認めないとの結果を得た。 [まとめ]IPFの肺線維化病変内の平滑筋増生にはPDGF-BBを含むCD68陽性の線維化病変内マクロファージが重要な役割を果たしていることが示唆された。
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