研究概要 |
近年、感染症において抗生物自身のストレス蛋白(HSP)が宿主免疫機構における主たる認識抗原となることが報告され、各種感染症において免疫応答を引き起こすHSPが報告されている。AIDSなどの日和見感染症として重要なクリプトコックス症の感染モデルを用い、我々はWestern blotting法をにて,Cryptococcus neoformans肺感染マウス血清中の菌体の蛋白に対する抗体の反応を検討した。その結果、感染血清中には菌体の数種の蛋白に対する抗体が産生されていたが、その中でもHSP70に対する反応は明確で、菌体のHSP70は抗原性の高い蛋白であり、液性免疫の主要な認識抗原であることが明らかとなった。 また、肺クリプトコックス症患者における検討でも、菌体のHSP70に対する抗体の所有率は対照群に比べ、有意に高かった。 次に、HSP70の免疫反応を調べるために、マウス脾細胞とHSP70の反応を検討した。非感染マウス,C.neoformans肺感染マウスより脾細胞を分離し、RPMI1640にて培養。それにHSP70を加え,培養上精中のTh-1およびTh-2関連のサイトカインを測定した。その結果、菌体のHSP70は、Th-2反応に比べTh-1反応を引き起こす蛋白であることが示唆された。クリプトコックス症の感染防御は、Th-1反応が重要な働きをすることが知られている。我々の結果は、クリプトコックス症の感染防御にも菌体のHSP70が大きく関わる可能性を示唆した。
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