研究概要 |
DPBを含む慢性気道感染症の治療にErithromycine(EM)やclarithromycine(CAM)などの14環系マクロライド剤が使用されるようになって、10年が経ち、臨床的にその有用性が確認されており、その作用機序の解析もあらゆる方向から進められている。しかし、リンパ球に対する作用は、Keichoらが、in vitroにおいてT cellの増殖活性化抑制に働くと証明した以外の報告はない。肺内リンパ球の解析には、適当な動物モデルの使用が必須であり、我々が作製したintubationモデルが慢性気道感染症の解析に使用可能と考えている。我々は、このモデルを用い、慢性気道感染症に対するマクロライド剤の作用機序、特にリンパ球に対する作用を解析した。 緑膿菌(ムコイド株NUS10)を用いてintubationモデルを作製し、CAMにて治療を行った。その結果、CAMの用量依存的な細菌学的治療効果が認められた。これはglycokalyxやbiofilmの抑制に伴い、菌のクリアランスが容易になったものと考えられた。Yasudaや武田が報告しているように、マクロライド剤によるglycokalyxの抑制効果が本モデルにて推測された。 また、CAMは細菌学的効果を与えない程度の少量投与でも:組織学的のみならず肺内リンパ球の解析でも、浸潤を抑制していることが本実験で証明された。このことから,CAMが細菌学的作用のみならず、生体側の免疫学的機構に何らかの作用が働いている可能性が示唆された。慢性気道感染症の際に浸潤するリンパ球は、CD4/CD8は低下傾向にあった。このことは、当科における慢性気道感染症のBAL中リンパ球の解析と一致するものであり、本モデルが臨床をよく反映していることが確認された。
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