慢性気道感染症の病態は、病理学的あるいは細菌学的に定義されてきた。しかし、慢性気道感染症の経時的病態は、臨床的にも実験的にも解析することは困難であった。我々は、緑膿菌持続感染マウス動物実験モデルを開発し、慢性気道感染症の免疫学的、病理学的解析を行った。 感染菌株としてムコイド型緑膿菌NUS10株を用いた。本菌を生理食塩水に浮遊させ(10^9cfu/ml)、その菌液に長さ2mmに切断した静脈留置用プラスチックチューブを3日間37℃の条件下で浸しておく。このチューブを、ddY系、雄、6週齢マウスの気管内に経口的に挿管し感染を成立させる。マウスのBALFを経時的に採取し、菌数定量と細胞数および細胞分画を測定し、サイトカインをELISAを用いて測定した。 感染初日に、BALF中の総細胞数とともに好中球分画の増加が認められ、3日目には減少し10日目前後にこれら総細胞数および好中球分画の減少のpeakがみられた。その後、再び緩やかに上昇し、30日目以降に以降細胞成分の50〜60%で定常化する。このようなBALF中の好中球数の動態は、MIP-2の動態とよく相関していた。また慢性気道感染症はサイトカインの動態から、4つの次期に分類することが出来、便宜的に急性期、亜急性期、亜慢性期、慢性期に分類した。急性期にはいずれのサイトカインも上昇し、亜慢性期にはTNFαが一過性の上昇を示した。慢生期にはにMIP2よる気道内の好中球浸潤を除き、サイトカインはコントロールレベルで推移していく。これらの結果から従来DPBやCystic fibrosisでのMIP2(IL8)の気道内好中球の遊走における役割の一犠牲を肯定しても疾患特異性は否定されることを示唆しているものと思われた。また、IL10の低下がむしろCystic fibrosisでの疾患特異性であることが示唆される。
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