気管支喘息は好酸球浸潤を中心にした気道の炎症であるが、好酸球の浸潤には肥満細胞の興奮およびリンパ球の浸潤も必要と考えられる。このような炎症細胞が気管支喘息の病態でいかなる機構にて浸潤するかについて検討するために、ヒト気道のアレルギー反応において血管内皮にどのような接着分子が発現するかについて研究した。 肺癌の手術で得られた肉眼的に正常と考えられる気管支組織を利用し、ダニに対する特異的IgE抗体が高値である気管支喘息患者の血清にてその気管支組織を受動感作した。その組織に抗原を加えて培養し、気管支血管内皮および気管支上皮における接着分子(ICAM-1、VCAM-1、E-selectin)の発現を免疫組織化学法にて染色し、定量した。 その結果、アレルギー反応により血管内皮にICAM-1、VCAM-1およびE-selectinが発現し、ICAM-1は気道上皮にも発現することを確認した。また、IL-1β、TNF-αによる刺激にてICAM-1、VCAM-1、E-selectinが発現し、IL-4はVCAM-1のみを発現させた。次に、抗原刺激後120分の培養上清中のIL-1β、IL-4、TNF-αを測定した。その結果、IL-1βは15検体中4検体にて上昇し、TNF-αは15検体中13検体にて上昇し、TNF-αの上昇は統計的に有意であった。また、IL-1、TNF-αに対する抗体を前処置した後に抗原を処置するとICAM-1、VCAM-1およびE-selectinの発現は抑制されることが確認された。 これらの反応は、IgEを不活化させると誘導されないことから、IgEが結合している肥満細胞が抗原刺激により興奮しサイトカインが遊離され血管内皮に作用し、そこで接着分子が発現し、その後に炎症細胞の浸潤が誘導されると推測された。この結果からサイトカインや接着分子のコントロールにより気管支喘息の治療の可能性が示唆された。
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