侵襲性肺アスペルギルス症の非侵襲的な迅速診断法として血清を用いたnested PCR法を開発し、動物実験モデルおよび臨床症例における有用性について検討した。 1)nested PCR法:Aspergillus属に特異的なDNAを増幅するためにプライマーとしてAspergillus fumigatusの18S ribosomal RNAのV7およびV9領域をコードする遺伝子配列からnested PCRが可能な2組を設定した。PCRはsingle PCRでは、DNA denature:94℃1分、annealing:50℃1分、DNA extension:72℃3分を30cycle、さらにnested PCRではannealingを65℃1分として同様に30cycleで行った。PCRの特異性は、臨床的に重要な真菌14菌種および一般細菌10菌種を用いて検討され、本法は、Aspergillus属5菌種においてのみ陽性となった。また、本法の感度はA.fumigatus精製DNA量50fgまで検出可能であった。 2)動物実験モデルにおける有用性の検討:マウス侵襲性肺アスペルギルス症モデルにおいては、本法は感染24時間後より陽性化し、陽性率は71%であった。これに対してgalactomannan抗原の陽性率は43%であった。さらに、ラットを用いた実験モデルにおいてもPCRの陽性率はgalactomannan抗原および(1→3)-β-D-glucanと同等以上であった。 3)患者血清における検討:病理組織学的に侵襲性肺アスペルギルス症と診断された20症例の保存血清を用いた検討では、nested PCRは70%、galactomannan抗原は60%の陽性率であり、nested PCRはgalactomannan抗原と同等以上であり、非侵襲的迅速診断法として臨床的に有用である可能性が示唆された。
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