研究概要 |
間質性肺炎におけるサーファクタント蛋白質A(SP-A)およびSP-Dの検討により、以下の知見を得た。 (1)血中SP-A,SP-Dは特発性間質性肺炎、膠原病合併間質性肺炎においてそれぞれ71.4%,87.0%および44.4%,71.1%と高い陽性率を呈した。そして、ステロイドによる治療効果で低下し急性増悪時に上昇することから、間質性肺炎の肺特異的な血清マーカーとして有用であることが明らかにされた。また、血中SP-Dの方が血中SP-Aよりも測定値の幅が大きく高い陽性率を示すことから、SP-Dの方がSP-Aよりも優れた血清マーカーである可能性が示唆された。しかし、血中SP-AとSP-Dが解離する症例もあり、間質性肺炎における肺胞傷害のheteogeneityを示唆する結果と考えられる。予後との関連では、血中SP-A,SP-D高値の間質性肺炎例の活動性は高く予後の悪いことが予想されるが、現在多数例を用いて解析中である。将来的には血中SP-A,SP-Dの値で治療対象例を選択できる可能性もあると考えられる、 (2)肺組織中および気管支肺胞洗浄液中のSP-A,SP-D値は健常者に比べてやや低値であり、血中SP-A値と気管支肺胞洗浄液中SP-A値には負の相関を認めることから、血中SP-A,SP-Dの増加は肺局所におけるSP-A,SP-Dの増加によるものではなく、間質性肺炎におけるalveolar-capillary borderの障害に起因すると考えられた。 (3)放射線照射患者および放射線傷害ラットにおいて血中SP-A,SP-D値の増加を認め、放射線傷害を検出する血清マーカーとしての有用性が示唆された。
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