研究概要 |
1)ヒトhistamine N-methyltransferase(HMT)の遺伝子構造 ヒトHMTcDNAを用いてヒトゲノムライブラリー(EMBL3)をスクリーニングし、得られたファージクローンよりヒトHMT遺伝子構造を決定した。またヒト腎臓より抽出したRNAを用いてprimerextension法により転写開始点の解析を試みた。primer extension法による結果は2つの主要なバンドが確認された。解析が進んだ下流域の転写開始点を基に遺伝子構造を解析すると、ヒトHMT遺伝子は6個のエクソンからなり、第一エクソンは137塩基の翻訳領域と383塩基と比較的長い非翻訳領域を有する。転写開始点の5'上流領域にはTATA様配列は存在せず、転写開始点から5'上流2kb以内には3個のSP-1,5個のGATA,2個のIRF-1,5個のLBP-1結合可能配列が存在する。一方他の主要な転写開始点は上述の転写開始点の約100b上流にあり、別のエクソンの可能性がある。他の遺伝子にみられるようにalternativeな転写開始点で組織特異的発現に関与している可能性がある。 HMT遺伝子の多型性 HMT遺伝子の多型性に関しては、これまで我々の報告やR Weinshilboumらの報告から、翻訳領域の314番目のCがTに変換しスレオニンがイソロイシンに変わる場合と、595番目のGがAに変換しバリンがイソロシンに変わる場合が考えられる。これに加えて第一エクソンの89番目から8個の塩基(CTAACAAA)が欠損するクローンが存在することわかった。 HMTの多型性と気管支喘息との関連について 気道におけるHMT活性レベルは気管支平滑筋のヒスタミンに対する収縮応答性に影響を与えることより、気管支喘息の遺伝子素因として重要な気道過敏性の形成にHMT遺伝子が関わりを持つ可能性が考えられる。我々はHMT遺伝子が気管支喘息の発症に関わりを持つか否かを調べる目的でHMT遺伝子の多型性を健常者群及び気管支喘息患者群について解析した。結果はエクソン6近傍のCA繰り返し配列数は対象者群で15から30まで分布しており、健常者群及び気管支喘息群における分布の差はx^2検定により、P=0.0115と有意であり、特に繰り返し配列数20以下が有意に喘息患者群で多かった。これらの事実はHMT遺伝子が一部の気管支喘息患者の発症に関わっており、20以下のCA繰り返し配列数は気管支喘息の危険因子と考えられる。
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