研究概要 |
気道上皮細胞と好酸球の相互作用に関して,以前は好酸球顆粒蛋白が気道上皮の傷害・剥離を起こすことが報告されていた.今回はより低い濃度で,気道上皮からのgranul ocyte-macrophage colony-stinulating factor(GM-CSF)の遊離に対する影響を検討した.気道上皮細胞としては,ヒト気管支上皮細胞のcell lineであるBEAS-2B(B2B)を用いた.B2B細胞を無血性培地(HD-F12)中でconfluentになるまで培養した.洗浄後Eosinophil peroxidase(EPO)を5.9x10^<-8>-5.9x10 Mになるように加え,15分間incubateした.洗浄後1mlのHD-F12を加え24時間までincubateした.上清を採取しGM-CSF濃度をELISAで測定した.B2B細胞は,前処置したEPOの濃度依存性に,また培養の時間依存性にGM-CSFを上清中に遊離した.(無処置の約3倍).この遊離は蛋白合成阻害薬であるシクロヘキサミドにて抑制され,またヘパリンにて抑制された.塩基性ペプチドである10Mのpoly L-arginine,poly L-lysineでも同様の作用が認められた.5.9x10^<-7>MのEPOは,10ng/mlのIL-1βに比べると能力は弱かった.(約1/6).5.9x10^<-7>MのEPOの前処置により,B2B細胞内のGM-CSFのmRNAは約2倍に増強された.同濃度のEosinophil major basic proteinによっても全く同じ結果が得られた.これより,好酸球塩基性顆粒蛋白は気道上皮を刺激し,蛋白の合成を介してGM-CSFの遊離を亢進させることが判明した.そしてこれは,塩基性蛋白としての性質を介していることが判った.
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