2年間の実験計画の初年度として、平成8年度には既にクローニング済の抗ウサギIL-8モノクローナル抗体をハイブリドーマで大量に生産し、以下の実験に用いた。 ウサギを麻酔後に左側開胸し、左主気管支の結紮により左肺を無気肺にした。3日後に気管支の結紮を解き、胸腔ドレーンで持続的に陰圧をかけて肺を急激に再膨張させることで、安定した肺水腫モデルを作成し得た。病理学的には再膨張肺に好中球集積をともなう水腫像を認め、免疫組織染色では肺胞マクロファージを中心にIL-8の発現を認めた。次にこの実験モデルにおいて、上述の抗IL-8抗体の治療効果を検討した。抗IL-8抗体の前投与により、肺水腫の指標値である肺湿乾重量比、I-125標識アルブミン肺組織取り込み率の上昇は、ともに有意に抑制され、組織学的検討と合わせ、IL-8の肺水腫病態への関与が明らかとなった。一方対照体を投与された動物では、上記指標値の改善を認めなかった。 また抗体以外にも、IL-8に対するアンチセンス・SオリゴDNAを初年度は3種類設計し、DNA合成器により合成後、HPLCを用いて精製した。この合成DNAをエンドトキシンで刺激した単球系培養細胞MonoMac6の培養液に加え、IL-8の産生に対する作用をin vitroで検討した。培養上清中のIL-8をELISA法により定量したが、残念ながら今回合成したアンチセンスDNAはIL-8産生を有意に抑制しなかった。次年度はさらに別の配列のアンチセンス分子を設計・合成し、そのIL-8産生に対する作用をELISA法に加え、PCRを用いた遺伝子解析法にても検討予定である。
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