2年間にわたる実験計画の2年目として、平成9年度には種々の成果を得ることができた。まず昨年度確立したウサギ再膨張性肺水腫モデルを用いて、虚脱後再膨張により肺水腫が発症することを、病理組織所見、肺湿乾重量比、I-125標識アルブミン肺組織取り込み率高値より、多面的に確認し得た。また抗IL-8抗体のみが病理所見、各指標値を何れも改善し、IL-8が肺水腫病態に関与していることは間違いなく思われた。また経静脈的抗体投与により肺局所の炎症が抑えられたことから、今後抗炎症療法としてヒト化抗IL-8抗体の開発の必要性が痛感された。 アンチセンスDNAに関しては、細胞内移行性がよく非特異的作用の弱い第二世代アンチセンスDNAを新たに複数設計し、DNAの細胞内移行率を改善するリポフェクチンの存在下で単球系培養細胞Mono Mac6に対し投与したが、IL-8産生を有意に抑制しなかった。一般に単球系細胞へのDNA摂取率は低く、サイトカインのように大量に産生される物質の抑制にはリポフェクチンに代わる担体の検索や、より効率的なアンチセンス分子の開発が必要と思われた。 一方慢性炎症性肺疾患である肺線維症のモデルとしてラット放射性肺臓炎を現在作成中であるが、各種ケモカインの発現が増強されていることを免疫組織染色で確認しており、今後これらケモカインに対する抗体、拮抗剤の投与による病変の改善を検討する予定である。
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