研究概要 |
本年度は、本研究計画(2年計画)の最終年度で、以下の研究結果が得られている。 (1)気道上皮細胞の抗原刺激に対するサイトカイン産生を介した応答 気道上皮細胞の細胞株をconfluentになるまで培養し、IgG,IgA,分泌型IgA(s-IgA)を加えてincubationした。そしてさらにFITCで標識した各種抗体(抗IgGと抗IgA)を加え、陽性細胞の有無をFACSを用いて解析した。その結果、IgG,IgA,s-IgAのいずれもが細胞表面に結合していることが明らかになった。すなわち、検討した気道上皮細胞株は、IgG,IgA,s-IgAに対する受容体を保有していることが示唆された。また手術材料より得られた新鮮な気道上皮細胞についての検討でも同様に結果が得られている。気道上皮細胞上に結合している免疫グロブリンの機能についての検討では、昨年度は免疫グロブリンをセファロースビーズに結合したものを気道上皮細胞の培養に加えて、培養上清中のGM-CSFを測定した。その結果、GM-CSFの明らかな産生が、実験の度ごとに安定して認められることはなかった。そのため今年度は、FACSで分析するのと同等の条件で免疫グロブリンと抗体により細胞を刺激し、上清中のGM-CSFを測定した。その結果s-IgAと抗IgAの組み合わせで、明らかなGM-CSFの増加がみられ、細胞に対して刺激作用のあることが示唆された。 (2)マウスの喘息反応において重要な役割を演じているサイトカインの同定 卵白アルブミン(OA)を抗原としてマウスを感作し、OAの経気道曝露により、気道過敏性が亢進することをアセチルコリンの吸入により確認した。ついで、この気道過敏性の亢進に、GM-CSFが関与しているかどうかを中和抗体の投与により検討したところ、抗GM-CSF抗体の投与で気道過敏性の亢進が完全に抑制された。さらにGM-CSFそのもので気道過敏性が亢進するかどうかを検討した。その結果GM-CSFの経気道投与により気道過敏性が誘導され、GM-CSFが気道過敏性の発現に重要な役割を演じていることが明らかとなった。
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