研究概要 |
平成8年度は,(1)ブレオマイシン肺臓炎マウス、(2)喫煙マウス、(3)肺線維症誘導トランスジェニックマウスを用いて、肺組織コラーゲン量とHSP47の遺伝子レベルでの発現を検討し、下記の点が明かとなった。(1)ブレオマイシン肺臓炎モデルでは、HSP47遺伝子の過剰発現はブレオマイシン最終投与3-4日後に一過性の上昇を認めたが、組織学的に肺線維化が認められる投与2-3か月後では対照群と比較して明確な差を認めなかった。(2)1年間喫煙暴露マウスでは、対照群と比較して肺HSP47遺伝子発現の明らかな増減を認めなかった。(3)肺線維症トランスジェニックマウスでは、4週齢マウスで明確なHSP47遺伝子発現の亢進を認めたが、48週齢マウスで発現が見られなかった。48週齢マウス肺重量は、同週齢マウスの肺の2-3倍高値を示し、コラーゲン量も2倍以上増加した。HSP47特異的蛋白は、HSP47発現低下をしめした肺線維症マウスで検出されなかった。(4)これまでの実験成績から臓器によりその発現に差が見られる可能性が示唆された。そこで、正常マウスと線維症トランスジェニックマウスの肺、心臓、肝臓でのHSP47発現量を測定したところ、無刺激下においても正常マウスでは心と肺組織で発現が見られ、肝臓ではほとんど検出しなかった。48週齢線維症マウスでは、肺と肝組織で発現が見られず、心組織では正常マウスと同程度の発現量が認めた。 今後の課題としては、正常時における肺及び心組織でのHSP47発現の意義、HSP47遺伝子発現調節による肺線維化の制御の可能性、肺組織HSP47の局在性、肺線維症成立後のHSP47発現抑制の機序とその意義等について追求し、肺構築に影響を与える種々の肺疾患の成因とHSP47の関係性を明確にし、発現制御による疾患治療の可能性についても検討する予定である。
|