研究概要 |
咳嗽は乾性咳嗽と湿性咳嗽に分けられるが、その客観的な計測方法はいまだ確立されていない。しかし咳嗽の記録とその性質に関する分析は、鎮咳薬、去痰薬の評価の上でも重要である。今回我々は、肺音分析の1つとして,咳嗽音に関して、健常人の母音発声と自発咳嗽音、および5人の慢性気管支炎患者と5人の健常者の自発咳嗽をそれぞれ自由音場で収録し音響学的に比較検討した。使用機器は、エレクトレットコンデンサーマイクロフォン(Sony ECM-23 F3)、DAT(SONY TCD-D7)で咳嗽を収録し、Power Macintosh 7100/66AV、音響解析ソフト(Sound Scope II)を用いた。咳嗽音を聴覚的に識別し、乾性咳嗽と湿性咳嗽に分類し、それぞれについて肺音解析システムにて解析した。また各位相に関しては、サウンドスペクトログラフや時間軸拡大波形を用い、音圧や波形の変化する時点で分類した.その結果、母音発声では、主な周波数成分は4kHz以下であり、10kHzまでわずかに周波数成分が認められた。一方、自発咳嗽では、20kHzまで広く高周波数成分が広がっていた。また、健常人自発咳嗽および患者の乾性・湿性咳嗽のいずれの咳嗽も、2相あるいは3相の成分に分けることができた。咳嗽の第2相、第3相には低周波数域に横に広がる倍音構造が認められ、気道壁のflatteringないし声道響振系の関与が考えられた。特に湿性咳嗽時の第2相には、波形の乱れがあり、持続時間の有意な延長傾向(260±129msec)を認め、またサウンドスペクトログラフではパルシブな成分が縦線として認められた。以上より咳嗽音の各位相の特徴を確認出来たことより、今後は聴覚に頼らず、開発している肺音計により科学的に各位相を分類し、比較検討することにより,咳嗽音以外にも,呼吸音、喘鳴、いびきの音解析と自動識別のシステム化が出来るようにさらに検討を加える必要があると考えている。
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