低分子量Gタンパク質は細胞内における多くの情報伝達経路を構成し、細胞の諸機能に深く関与することが知られている。本研究はラット肺cDNAライブラリーから新たにクローニングされたrabタンパク質(rab p24)の肺組織での発現とその局在を検討した。rab p24cDNAからインセクト細胞を用いてリコンビナントタンパク質を精製した。またrab p24のアミノ酸配列に基づきポリペプチドを合成し、これを抗原にしてポリクローナル抗体を作成した。ラット肺の急速凍結切片および単離肺胞マクロファージ、単離肺胞II型上皮細胞の塗抹標本を作成し、上記抗体を用い肺組織内rab p24の細胞局在を免疫染色法にて検討したところ、肺胞II型上皮細胞と気管支上皮細胞にrab p24の発現を認め、肺胞マクロファージには認めなかった。またジゴキシゲニン標識RNAリボブローブ法によるインサイトハイブリダイゼーションにより肺胞II型上皮細胞と気管支(特に末梢気道)上皮細胞に陽性シグナルを検出した。上記単離細胞からRNAを抽出し、RT-PCRを施行しrab p24に対応するRT-PCR生成物が肺胞II型上皮細胞で検出され、肺胞マクロファージでは検出されなかった。単離肺胞II型上皮細胞から細胞小器官画分を作成し、ウエスターンブロット法を用いてrab p24の細胞内局在を検討し、高比重小器官画分にrab p24が多く存在していることを明らかにした。末梢気道上皮細胞と肺胞II型上皮細胞は肺サーファクタントを産生する特異的機能を有する点からrab p24がサーファクタントの輸送・分泌を制御していることが推測される。
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