研究概要 |
1.クラミジア外膜複合体を用いたELISA法の検討 1)3種のクラミジア間の交差反応性が少なく,かつ簡便な抗体検査法確立のため,本邦分離C.pneumoniaeYK-41株から調製した.クラミジア外膜複合体を抗原としたELISA法による抗体測定キットを開発した。 2)健常小児79検体,C.pneumoniae抗原陽性患者51検体,C.trachomatis感染症15検体,C.psittaci感染症14検体の血清について,本ELISA法とmicro-IF法との比較ならびにWestern blot法による確認を行い,micro-IF法に匹敵する感度と,特異性に優れた測定法である結果を得た。 3)全国規模で呼吸器感染症状を有する小児,成人255例,418検体についてmicro-IF法と比較して結果良好な相関が得られた。 2.動脈硬化病変部からのC.pneumoniaeの検出 あらかじめ全身潅流固定法により保存されている解剖体のうち肉眼的に動脈硬化病変の認められた11体(♂8,♀3)を選び,冠動脈部より30検体,大動脈部より33検体を採取。窪田のプライマーを用いたnestedPCRならびに免疫染色を行いC.pneumoniae抗原検索を行ったがすべて陰性の結果であった。 3.自己免疫マウス(NZW×BXSB)F_1を用いたC.pneumoniae再感染モデルによる動脈硬化病変の検討 1)24週齢で50%に心筋梗塞を発症する(NZW×BXSB)F_1マウスにC.pneumoniaeを反復感染して経時的に冠動脈病変を観察する目的で,16週齢の本マウスにC.pneumoniae kkpn-15株10^5IFU/mouseを点鼻感染した。通常C.pneumoniaeによるマウス肺炎は自然治癒傾向を示し,致死的肺炎に至ることはないが,本実験では3日以内に50%以上,7日で100%肺炎死し,組織学的にも重度の病変が認められ,宿主条件により致死的肺炎の危険性が示唆された。 2)感染菌量を変えて検討し,10^4IFU以下では死亡例のないことを確認して,現在反復再感染実験を継続中である。
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