研究概要 |
サルコイドーシスは病変部(その大半は肺または眼)への著明なCD4陽性T細胞とマクロファージの浸潤を特徴とする原因不明の慢性の炎症性疾患である。 我々はCD11b+T細胞,CD28+T細胞は臓器特異的分布することを明らかにした。この研究の過程に、肺サルコイドーシス患者の肺胞洗浄液(BALF)中のT細胞は膜表面抗原CD3,CD11b,CD28抗原が著明に減少している事を見いだした。このBALF中のT細胞はmRNAレベルでT helper type1(Th1)タイプ主体のサイトカインを強く発現していた。そして、肺サルコイドーシス患者の病変部(BALF、眼房水)から樹立したT細胞クローンはIL-4以外のTh1タイプ主体の様々なサイトカインを未刺激下で多量に産生する事をクローンレベルで証明した。一方、患者病変部の肺胞マクロファージはCD28抗原のリガンドのB7(CD80),B70(CD86)抗原をHLA-DR抗原とともに強く発現していた。それ故、病変部の活性化T細胞が産生するサイトカインがサルコイドーシスの原因と関与し、このサイトカイン産生はCD28抗原とリガンドのB7(CD80)、B70(CD86)抗原を介する副シグナル(second signal)によって増強されていることが示唆された。 サルコイドーシス患者におけるT cell receptor(TCR)Vα,Vβ遺伝子特にVα遺伝子のレバトワ-は未だ不明である。これは、1)TCR遺伝子の発現の検出方法2)対象患者の数3)対象患者のHLA back groundの偏りが原因と考えられる。そこで我々は、adaptor-ligation法、reverse transcriptase-PCR法、sequence-specific oligonucleotide probes法を用い30名の肺サルコイドーシス患者の末梢血中、肺胞洗浄液中のTCR Vα,Vβ遺伝子を解析した。また、患者のHLA classI,IIを遺伝子解析し、TCR Vα,Vβ遺伝子との相関についても解析した。肺サルコイドーシス患者の末梢血中、肺胞洗浄液中のTCR Vα,Vβ遺伝子は特定のTCR Vα,Vβ遺伝子に偏りはなく、HLA classI,II遺伝子とも強い相関はみられなかった。(Clin.Exp.Immunol.,in press)
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