研究概要 |
1.ヒト生検筋におけるNOSの分布:対象は,ミトコンドリア脳筋症,筋緊張性ジストロフィー,多発筋炎などの各種生検筋凍結切片を用いた.(1)正常筋線維では筋鞘膜(特にtype2線維)にn-NOS,NADPH-d染色性を有し,ec-NOS染色では有意な染色性を有しなかった.(2)ミトコンドリア脳筋症,筋緊張性ジストロフィーのRRFでは,n-NOS染色,NADPH-d染色にて筋鞘膜および一部の筋線維内に強い染色性を有し,ec-NOS染色も筋鞘膜下・筋線維内に強く染色された.RRFにおけるNOS,SODが強く発現していることは,骨格筋内のNOは何らかのフリーラジカルに関与する作用を有するものと考えられる.多発筋炎の壊死・再生線維では,NADPH-d染色,n-NOS染色ともに筋鞘膜の染色性が低下し,再生線維の一部には筋線維内にec-NOSが陽性に染色性を有する線維がみられた.筋の変性・再生におけるNOSの発現・消退を推定する上で興味深い所見である. 2.NADPH-d電顕組織化学染色を用いた骨格筋におけるNOSの超微細局在の検討:筋線維の中で筋鞘膜およびミトコンドリア外膜が強陽性に染色されるものと陰性に染色されるものが存在した.超微形態的検討でも筋内にNOSが局在が証明され,筋鞘膜にはn-NOS,ミトコンドリア外膜にはec-NOSが局在していると考えられる. 3.電極法NOモニターを用いてマウス骨格筋培養細胞株(C2C12)におけるNO発生の測定:10^<-2>ML-arginine負荷後,分化誘導後1日目の培養細胞ではNO発生はほどんど認めず,4日,7日目の細胞でNOの発生を示唆する上昇がみられ,7日目により強く認めた.さらに発生している物質がNOであることをNOであることを検討するため阻害実験を行った.分化誘導7日目の培養細胞に10^<-3>MのL-NMMAを前投与することによりL-arginine投与によるNOの発生は認められなかった.分化誘導7日目の培養細胞にL-arginine投与後,NO発生を認めている時,10^<-3>MのL-NMMAを投与によりNOの発生は急速に低下し,培養細胞のNO発生はL-NMMAにて阻害された.また,培養細胞におけるn-NOS染色,NADPH-d染色を施行し,NOSが存在することも確認した.このことは,骨格筋培養細胞にてNOが発生すること,骨格筋の分化によりNOS・NOが増加することを示唆するものと考えられる.
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