研究概要 |
ヒトの眼球運動中枢を磁気刺激、functional MRIを用いて分析した。正常ボランティア10名を対象として、中枢神経機構が異なると思われるvisual guided saccade,memory guided saccade,antl-saccadeを行わせ、EOGによる眼球運動を記録し分析した。磁気刺激は、局所刺激の可能な8の字コイルを用いて頭皮上様々な部位で行い上述の眼球運動に対する効果を見た。またそのタイミングについても解析した。functional MRIを、上述の眼球運動中に行い、眼球運動中枢の三次元的部位の固定も施行した。 Visual guided saccade,memory guided saccadeは磁気刺激により影響を受けず、antisaccadeのみ磁気刺激により反応の延長が出現した。antisaccadeはgo-signal後約250msで開始したが、磁気刺激により40-50ms延長した。 頭皮上3か所でこの効果が得られた。一番効果的なのは、手の運動野より2〜4cm前方で、go-signalから100-120msのタイミングで効果が表れた。第二は手の運動野から12-15cm後方で後頭葉と思われる部位で、go-signalから80ms位で効果を示した。最後は頭頂葉と思われる手の運動野より6-8cm後方で、100ms前後で効果が認められた。以上よりantisaccadeにおいて、go-signalから80ms位で後頭葉、100ms位で頭頂葉、120ms位で前頭葉が働き、250ms位で眼球運動が起こると考えられた。 Functional MRIでも、眼球運動の時に上述の3か所で血液の上昇が見られた。前頭葉の部分は前頭眼野に相当すると考えられ、MRIでも手の運動野より2cm位前方であった。両者の位置の差は、磁気刺激での差と合致した。 以上より、ヒトにおいて1.antisaccadeの時に視覚野→頭頂葉→前頭眼野の順に機能している。2.前頭眼野は手の運動野の約2cm前方にある。と結論した。
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