1)CAA発症に関与する遺伝的因子に関する研究: a)方法:日本人高齢者例について、血液ないし凍結脳からDNAを抽出、APOE遺伝子型を検索した。剖検脳の神経病理学的検索、アミロイドβタンパク(Aβ)、タウ、ユビキチンに対する抗体を用いた免疫組織化学的検索を行い、CAAの有無、程度、他の老年変化について評価した。APOE遺伝子型とCAAとの関連を検討した。 b)結果:APOE遺伝子型とCAAの有無、程度の間に明らかな関連を認めなかった。 c)考察:本邦高齢者にみられるCAAについては、APOEε4の影響は乏しいことが示された。これは米国における成績とは異なり、APOE遺伝子型のCAAへの影響に関しては人種差がある可能性がある。APOE以外の因子がより大きく影響している可能性があり、更にpresenilin-1遺伝子多型などにも検索の幅を拡げている。 2)CAA発症に関与する免疫系因子に関する研究: a)方法:弧発性Aβ型CAA、脳血管炎に伴うAβ型CAA、アイスランドの遺伝性CAA(cystatin C型)を対象に、脳血管に浸潤する免疫系細胞の表面マーカーの解析を行った。 b)結果:Aβあるいはcystatin Cアミロイドの沈着する脳血管では単球・マクロファージ系細胞が増加していた。脳血管炎を伴う例では、単球・マクロファージ系細胞の顕著な反応に加え、CD4^+およびCD8^+のT細胞の浸潤が認められた。 c)考察:CAAでは単球・マクロファージ系細胞が増加し、更に著名な肉芽腫性反応を起こす場合があることが示された。単球・マクロファージ系細胞の増加が脳血管アミロイド沈着に対する反応であるのか、あるいはアミロイドの沈着過程にも関与しているのかは大きな問題でありこうした免疫系細胞の制御がCAAに対する治療につながる可能性があると考えられた。
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