1)脳アミロイドアンギオパチー(CAA)発症に関与する遺伝的因子に関する研究: a)方法:日本人高齢者令例について、血液ないし凍結脳からDNAを抽出、presenilin-1(PS-1)遺伝子型イントロン8の多型を検索した。脳の神経病理学的検索、アミロイドβタンパク(Aβ)、タウ蛋白等に対する抗体を用いた免疫組織化学的検索を行い、CAAの有無、程度、他の老年変化について評価した。PS-1遺伝子型とCAAとの関連を検討した。 b)結果:PS-1遺伝子型の2/2遺伝子型を有する例では他の遺伝子型と比べてCAAの程度が有意に軽かった。 c)考察:PS-1の2/2遺伝子型はCAAのリスクが低いことに関連している可能性があることを初めて示した。PS-1がCAAアミロイドに局在することが報告されており、今後はPS-1遺伝子多型が脳血管におけるAβ前駆体蛋白発現に与える影響などを解析していく必要がある。 2)CAAに伴う痴呆に関する研究: a)方法:孤発性Aβ型CAA43例にみられた痴呆について解析した。 b)結果:32例74%に痴呆があり、痴呆の原因としてはアルツハイマー病(AD)の合併、CAAに伴う脳血管障害による血管性痴呆(VD)、ADとVDの混合型痴呆が多かった。更に、高度の血管周囲性の斑状のAβ沈着を特徴とするADの血管型亜型ともいうべき1例が含まれていた。 c)考察:高度のCAAを有する痴呆患者の中にはADの血管型亜型として位置づけられるケースがあり、特徴的なAβ沈着パターンをもたらすAβ前駆体蛋白のプロセッシングの存在が推測された。
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