本年度は四川省出身の家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)患者のトランスサイレチン(TTR)遺伝子の異常を解析した。患者は36歳男性であり、2年来の多発神経炎と自律神経障害を示していた。また父親が類似な症状で46歳時に死亡していた。患者の末梢神経組織には抗TTR抗体陽性のアミロイド沈着が見られ、またmass spectrometryによる血清中のTTRのスクリーニングでは正常TTRとは異なる変異TTRのピークが見いだされた。この異常TTRピークは質量の差からFAPでよく見られるMet30TTRではないことが判明したため、血清中からTTRを抽出してTTRのアミノ酸配列を直接的に検索した。その結果、N末端から33番目のphenylalanineがvalineに置換していることが明らかとなった。このTTR変異は従来FAPでは報告のない新しい変異であり、本患者は中国人におけるFAPの臨床像・遺伝子異常の多様性を知る上で興味ある患者と考えられた。
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