研究概要 |
本年度は長野県内で見い出された新しい家族性アミロイドーシス(FAP)家系の臨床病理像ならびに遺伝子異常の解析を行った。発端者は茅野市出身の80歳女性であり、78歳頃から徐々に下肢の異常感覚、脱力が出現し、その後心障害、消化管運動障害を中心とする自律神経障害が加わった。遺伝歴はなかった。トランスサイレチン(TTR)遺伝子の解析では38番目のAsp→Alaが確認された(Ala38TTR)。本患者の臨床像の特徴は比較的早期からアミロイドによる心障害が目立つことである。我々は1978年に類似な臨床像を示す小県郡丸子町出身の家系を報告している(Brain 110;315-337,1978)。本家系では60歳男性と58歳女性の2名が類似疾患で死亡しており、後者の心筋から抽出したDNAの解析からAla38TTRが確認された。これら2家系の明らかな血縁関係はないが、両地区は比較的近接しており、遺伝的関連性は今後さらに検索する必要があると考えられた。 我が国のFAP家系は北海道から長崎まで広く分布しており、またTTR遺伝子の異常も最も頻度の高い30Val→Met以外に約11種類の変異が知られていた。本研究でFAPの原因となる新しいTTR遺伝子の異常が追加されたことになる。
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