研究概要 |
我々は昨年の報告で、糖尿病(DM)ラットの神経再生障害の一因に神経再生に先行するワーラー変性の遅延があり、そのワーラー変性の遅延に細胞骨格蛋白の一つであるニューロフィラメント(NF)のC末端KSPモチーフのリン酸化の亢進が関与する可能性を示唆した。今回、我々はDMで見られたNFのリン酸化の亢進が、いかなる機序によるかを明らかにするため、まず基礎的検討としてNFキナーゼの候補であるCdk5とその活性化因子p35,ERK2,GSK3β,JNKに注目しこれらの酵素のラット末梢神経系における発現と局在およびキナーゼ活性を検討した。 (1)ウエスタンブロット法による検討:後根神経節(DRG)、坐骨神経(SN)でCdk5,p35,ERK2,JNK,GSK3β蛋白の発現を認めた。 (2)免疫組織化学法による検討:Cdk5,p35,ERK2,JNKは脊髄前角細胞とDRGの細胞体とSNの軸索に存在したが、GSK3βは主にシュワン細胞の存在し、神経細胞には存在しなかった。 (3)免疫沈降法による検討:DRGとSNでCdk5とp35はアソシアーションしていた。 (4)in vitro kinase assay:DRGでCdk5/p35,ERK2,JNKのキナーゼ活性を確認し得た。 末梢神経系でCdk5/p35,ERK2,JNKの神経細胞および軸索での発現とキナーゼ活性を確認した。糖尿病性神経障害を含む末梢神経障害でこれらのキナーゼの発現量および活性の変化が疾患に特異的な細胞骨格の異常病理の形成に関与している可能性があり、今後疾患モデル動物で検討する予定である。
|