研究概要 |
1.マウス脳ホモジネートの自動酸化:遷移金属の存在は脳ホモジネートの自動酸化による脂質過酸化を促進した.DAと6-OHDAは単独ではこの自動酸化に影響を持たないが,遷移金属による脂質過酸化をDAと6-OHDAは濃度依存的に抑制した.この抑制はDAと6-OHDAが遷移金属と配位したためと考えららた. 2.細胞死に伴う転写因子活性の変化と神経栄養因子の防御効果:初代培養神経細胞とグリア細胞は6-OHDAとH_2O_2によって濃度依存的に細胞生存率が減少したが,グリア細胞の方がより抵抗性であった.転写因子DNA結合活性(TRE結合,CRE結合)は神経細胞では細胞数の減少に平行して減少したが,グリア細胞では細胞数が減少したにも拘わらず亢進した.神経栄養因子brain-derived neurotrophic factor(BDNF)は6-OHDAとH_2O_2によって低下する培養神経細胞の転写因子活性を高め,逆に,グリア細胞では6-OHDAとH_2O_2によって亢進する転写因子活性を低下させた.これらの成績から,酸化的ストレスの転写因子に及ぼす効果は神経細胞とグリア細胞とでは異なっていることを明らかにした. 3.DA系cell line(B65)に対する(1)遷移金属[FeCl(ll),FeCl(lll),CuCl(ll),AlCl(lll)]および(2)DA,6-OHDA,L-DOPA,H_2O_2の毒性をWST-1 assayにより検討した.遷移金属ではCuCl(ll)が顕著な細胞毒性を示した.DA,6-OHDA,L-DOPA,H_2O_2は濃度依存的に細胞生存率が減少したが,特に6-OHDAとH_2O_2で毒性が高かった.(1)と(2)を前もって反応させてから細胞を処置しても,それぞれの単独の毒性以上には細胞毒性は高くならなかった.逆に,高濃度のFeCl(ll),FeCl(lll)の毒性は6-OHDAで抑えられた. 4.次年度に酸化的ストレスによるDAセレプターの微細損傷を検討する予定であるが,そのためのPCR-SSCP法の確立の準備は順調に進行している.
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