研究概要 |
私どもはアジア型MS患者26人と西洋型MS患者28人について各種免疫学的パラメーターの比較を行った。その結果、血清全IgE値と抗Helicobacter pyrori抗体の有無について有意な差を認めた。血清IgE値はアジア型174【.+一。】184U/ml、西洋型118【.+一。】269U/mlとアジア型MSが有意に高値だった。また血清IgE値が250U/ml以上のhyper IgEemiaを呈した患者の頻度もアジア型MS 8/26(31%)、西洋型MS 2/28(7%)とアジア型MSで有意に高値(p=0.033)だった。このうち9例のMS患者(アジア型MS 7例と西洋型MS 2例)で、アレルゲン特異的IgE(ダニ抗原とスギ花粉)が証明された。この9例のhyper IgEemiaを伴うMSは、MSの総合障害度が有意に軽く、脊髄MRI所見の異常も低率(2/8)で、かつ髄液所見がIgG index,oligoclonal bandsも含め正常という特徴があった。したがって、この群はMSの中でも特異なサブタイプと考えられた。このhyper IgEを伴うMSを除外した残りのアジア型MS(19例)は、有意に女性に多く(男女比1対18)、平均発症年齢が有意に高い、総合障害度が有意に高い、髄液細胞数増多、蛋白上昇が有意に高い、脊髄MRIでの異常が高率といった一定の特徴を示したことから、一疾患単位と考えられた。現在、hyper IgEemiaを伴う群と、伴わない群に分けて、DRB1,DRB3,DRB5,DP遺伝子座の決定を行っている。一方、アジア型MSは西洋型MSに比し有意に抗Helicobacter pyrari抗体陽性率が高かった(56%対18%、p<0.05)。現在、他の腸内細菌に対する抗体についても検索中であるが、アジア型MSと西洋型MSでは既往の感染症のプロフィールに差異がある可能性が示唆された。このことは両者のimmunogenetic backgroundの違いとも関連して、病像の違い、即ちautoimmune responseの生じ方の違いを引き起こしているかもしれない。今後さらに両病型について感染症プロフィールとHLA class II遺伝子プロフィールの相違を検索していくことが重要と考えられた。
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