研究概要 |
リソソーム酵素であるgalactosylceramidase(GALC)の欠損によってKrabbe病が発症するが、その殆どは乳幼児期に発症して非常に重篤な経過をとる。一方、数は少いながら良性の経過をとる成人型があることが近年報告されている。今回、成人型Krabbe病5例(松山、京都、飯塚、新潟、佐賀例)のGALC cDNA解析を行った結果、これまでに報告のない3種類のアミノ酸置換と1種類のエクソンスキッピングを見い出すとともに、これらの変異によって実際にGALC活性が消失することをin vitroで確認した。乳幼児型Krabbe病の変異部位とこれら成人型の変異部位を比較すると、成人型では変異がGALC cDNAの5,側と3,側に集まる傾向にあることが判明し、これはGALCの酵素活性部位を知る上で重要な手がかりになると考えられた(論文投稿中)。 また患者ゲノムの解析により、エクソンスキッピングはイントロンに存在する塩基置換によって生じることをin vitroで確認するとともに、京都の例では一つのアリ-レ上にナンセンスミューテーションが存在し、二つのGALC遺伝子のうち一方が全く発現していないことも確認した(論文投稿中)。 GALC酵素はリソソーム内では50と30kDaの二つのサブユニットに分かれているが、以上の結果より、50kDaのC末端側と30kDaのN末端側が酵素活性に重要な働きをしていることが予測された。そこでこれらのサブユニットを別個に発現するベクターを作成し、今後これらの産物を比較することでさらにGALCについての詳細な機能解析を行う予定である。 一方、将来この疾患に対して遺伝子治療を行うことを目標としてレトロヴィールスベクターを用いたGALCの遺伝子導入系も作成したので、今後患者線維芽細胞などを用いて遺伝子治療の基礎的実験を行って行く予定である。
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