研究概要 |
Globoid cell leukodystrophy(GLD,Krabbe病)ではリソゾーム酵素であるGalactosyl-ceramidase(GALC)の欠損により異常ミエリンの形成が起き,その結果中枢神経及び末梢神経に障害が起きる。Krabbe病の多くは乳幼児型であるが,長期の経過をとって歩行障害が徐々に進行する成人型も報告されておりその差が何故生じるのか興味を持たれている。また,GALCは80kDaの蛋白であるが,細胞内では50kDaと30kDaにプロセスされており,それぞれのサブユニットがどのような働きをしているかについては不明である。この疾患に対して最終的には遺伝子治療を行うことを目的として,GALCアミノ酸置換が酵素蛋白の発現とプロセッシングに及ぼす影響に関して検討するとともに,遺伝子治療用ベクターの開発を行った。 1.研究対象・方法 (1)成人型GLDに認められたアミノ酸変異2種を導入したGALC cDNAや,50kDa,30kDaに相当する部分のcDNAを発現ベクターに組み込みGALC蛋白の発現やプロセッシングを評価した。(2)GALC遺伝子を安定発現させたCHO細胞を樹立してマンノース6ーリン酸(M6P),NH4Cl,クロロキンのGALCプロセッシングに対する影響を検討した。(3)正常型GALC遺伝子をレトロヴィールスベクター(RV)およびアデノ関連ビールススベクター(AAV)に導入して遺伝子治療を目的とした発現系を作製した。 2.結論 (1)変異GALCの発現実験では,GALCのC末端を用いたウェスタンブロッティングで野生型の培養上清中ではその殆どが80kDaであるのに対して,細胞内では殆どが50kDaと30kDaであった。しかしながら50kDaと30kDaは別個に発現させて混合しても酵素活性は全く認められかなった。(2)M6Pにより80kDaGALCの細胞内取り込みは阻害され,NH4Cl,クロロキンにより80kDaより50kDa,30kDaへの蛋白プロセッシングが阻害された。(3)現在RVではGALC活性の高いクローンの選択を,AAVでは感染高率を上げる改良を試みている。 3.考案 以上の結果より,GALCはM6Pシグナルを持ち,リソゾーム内でプロセッシングを受けること,酵素補充療法や遺伝子治療では80kDaのGALCを補うことが重要であり,これを細胞外に補充しても細胞内に取り込まれ活性が出現する可能性が高いことが予想された。今後これらの成果を遺伝子治療に応用して行く予定である。
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