研究概要 |
眼咽頭筋ジストロフィー(OPMD)は通常40歳以降に発症し,眼瞼下垂と嚥下障害を主徴とする常染色体優性の遺伝性疾患である.これまでFrench Canadianなど欧米白人家系のみが知られ,one founder effectで世界中に広まったと考えられてきた.これに対し,我々はOPMDの日本人家系例を熊本と静岡に見い出し(Neurology 1996;46:773-778),両家系のphenotypeの相違,歴史・文化的観点などから,互いに異なったgenotypeが存在する可能性を臨床面から指摘した(Neuromusc Disord 1997;7:S41-S49).また,静岡の大家系において,本症遺伝子がFrench Canadianと同じ14q上に局在することを証明した(Ann Neurol 1996;40:954).本年度はさらに,熊本の小家系のハプロタイプを解析し,静岡,French CanadianおよびFrenchとは異なった独自のハプロタイプを有することを見い出し,報告した(第2回日仏合同筋ジスワークショップ,1997年10月).また,この1年間で熊本において,本邦第3,4,5,6家系を新たに見い出し,うち2家系の祖先が大分の先住民であることを明らかにした.加えて,本症との異同が論議されてきた,眼・咽頭・遠位型ミオパチーの常染色体劣性の遺伝形式にて発症した家系を検索し,この疾患ではOPMDに特異的な8.5nmの核内封入体は見られず,封入体筋炎に特徴的な15-16nmの細胞質内封入体が認められることを初めて指摘した(Neuromusc Disord:in press).
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