研究概要 |
平成8年度の研究に続けて,平成9年度は1)図形刺激による事象関連電位(N200,P300)を測定し,正常Xにおけるトポグラフィーとダイポール測定を行った。2)パーキンソン病や脊髄小脳変性症などの変性疾患の鑑別を行いながら,図形刺激による事象関連電位が鑑別診断上の補助手段として役立つかどうかを検証した。3)注意選択課題・注意変換課題を与えながら測定する視覚性事象関連電位検査を考案した。 1)16-32チャネルトポグラフィーを作成,ダイポール推定を施工,前頭前野,帯状回,下頭頂葉にP36ダイポールがあることが判明した。また,指尖脈波振幅増大はP3a振幅増大と相関することも判明した。後頭部から記録されるN100/P100と,頭頂部から測定されるP36を組み合わせたパラメータを考案した。我々の課題では,rdre targetからP36を,rare non TargetからP3aを同時かつ簡便に測定できることが臨床応用上,有益と考えた。 2)パーキンソン病におけるP300は罹病期間5年以上で振幅低下と潜時延長を示した。これらの異常P300所見と相関した臨床症候は,歩行障害(特にすくみ足)であり,また相関を示した検査はWAIS-Rの動作性IQであった。パーキンソン病と臨床的に共通点があり,しばしば鑑別に困難を要する線条体,黒質変性症(SND)進行性核上性麻痺(PSP),皮質基底核変性症(CBD),オリーブ橋小脳萎縮症(OPCA)のP300を詳細に分析し,それぞれの疾患におけるP300の特徴を明らかにした。SNDでは運動障害の高度進行例でも正常波形が保たれ,PSPでは早期よりP300振幅が低下する,CBDでは早期からP300潜時が延長するという所見が認められた。OPCAでは橋萎縮が著しく錐体外路障害が著明な典型例で振幅低下を示した。 3)青,緑の2色,異なる2種類の形,異なる2種類のパターンを組み合わせた図形を呈示しながら注意選択・注意変換課題を行わせる課題を作成した。正常対照例でのN200,P300の正常波形を求め,今後はパーキンソン病,小脳疾患などに本課題を応用する予定である。
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