研究概要 |
パーキンソン病(PD)でのP300を中心に事象関連電位(ERPs)の神経変性疾患への臨床応用について検討した. PD患者38例,進行性核上性麻痺(PSP)8例,大脳皮質基底核変性症(CBD)10例,線条体黒質変性症(SND)9例,正常健常者25例を対象とした.視覚性オドボール課題とS1-S2課題を用いて,ERPsを誘発した.PD群でのERPsの結果は発症年齢、検査時年齢、罹病期間及び課題の種類、刺激間隔(ISI)などの因子ファクタによって,どのように影響されるか;PD群でのERPsの結果が認知機能(WAIS-R)および運動障害と相関するかどうか;パーキンソン症候群(平均罹病期間5年未満)をPSP,CBD,SND,PDの4群に分け,各群におけるERPsの変化に特徴があるかどうかを調べた.PDにおけるERPsは発症年齢、検査時年齢、罹病期間ISIの影響を受けた.パーキンソン症候群に属する4群においてそれぞれ、ERPsの特徴的な所見が見い出され,ERPsが神経変性疾患の鑑別診断に有用な情報を提供できることが明らかにされた. PDでは発症年齢が遅く,検査時年齢が高く,罹病期間が長いと,P300の異常が出やすくなる.PDにおけるP300が発症年齢,検査時年齢,罹病期間などに影響されることが,それらの条件の異なるスタディー間で,結果が一致していない一つの原因と考えられる.発症早期にPDの認知機能を評価する時,オドボール課題より, short-term memoryやexcutive functionなどに関与するS1-S2課題が有用である.P300の振幅はPDの寡動、振戦、固縮などのドパミン系の運動障害とは相関しなかったが,歩行障害と有意な負の相関を示した.PDにおけるP300の異常はドパミン系の障害より,ドパミン系以外の障害と強く関与していることが示唆された.PDにおけるP300異常に反映される認知機能障害は視覚性の律動刺激によって,改善される可能性が示された.これに対して,phrenies paradoxalesという新しい用語を提唱する.
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