研究概要 |
本年度は、脳梗塞治療におけるtherapeutic window(有効な治療開始可能な時間帯)を実験的に決めるための基礎データを、まず砂ネズミ一側総頸動脈結紮モデルで収集した。すなわち、局所脳血流量(1CBF)とcyclic AMP結合量を経時的に。オートラジオグラフ法により測定し、虚血性神経細胞傷害の指標であるcyclic AMP結合量の有意な低下((sham手術群の平均値-2*標準偏差)以下の値を示すことと定義した)を生ずる1CBFの値をischemic CBF thresholdとして求めた。 その結果、海馬CA1のischemic CBF thresholdは、虚血30分、2時間、6時間で、各々18,34,49ml/100g/minであった。一方、側頭葉皮質で、虚血30分では有意なcyclic AMP結合量低下は1CBFが0ml/100g/minでも明らかでなく、虚血2時間、6時間でのischemic CBF thresholdは各々、18、23ml/100g/minであった。 以上より、虚血の持続と共に、細胞傷害を惹起する脳血流量の閾値が、徐々に上昇し、虚血時間が長くなるほど、より軽度の脳血流量低下で細胞傷害が生ずる、虚血持続時間依存性が明らかとなった。さらに、海馬CA1のように虚血脆弱性を示す領域では、他の領域に比し、より軽度の虚血で傷害が示す部位特異性も明らかとなった。現在、ラット中大脳動脈閉塞モデルでの検討を継続中である。
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