研究概要 |
本年度は、ヒトの脳梗塞の病態により近い動物モデルである、ラット中大脳動脈閉塞モデルで、虚血持続時間、局所脳血流量(ICBF)減少の程度と細胞質小胞体へのCa^<2+>取り込み能、セカンドメッセンジャー系として重要なcyclic AMP依存性プロテインキナーゼ(PKA)のcylcic AMP結合能を検討した。 中大脳動脈閉塞5時間では、ICBF<20ml/100g/min以下の重度虚血部位では、Ca^<2+>-ATPase活性による小胞体へのCa^<2+>取り込みは有意に低下していた。また、inositol 1,4,5-trisphosphate(IP3)による小胞体からのCa^<2+>放出能は、IP3受容体のIP3結合能が保たれているにも関わらず、尾状核-被殻で明らかに低下していた。また、PKAのcyclic AMP結合能も、Western blotによる検討でPKA蛋白は維持されているにも関わらず、ICBF<20ml/100g/min以下の重度虚血部位で有意に低下していた。これらのことは、虚血5時間の時点では、ICBF20ml/100g/min以下の領域は細胞内諸機能の重度な障害を受けていることを示している。なお、虚血3時間では、上記障害は、ICBFが7-10ml/100g/min以下の領域でのみ、限局的に認められた。以上より細胞内Ca^<2+>調節機構やセカンドメッセンジャ系の障害は虚血3時間以降5時間までにかなり進行するので、脳梗塞治療の有効な時間域は発症3時間以内であると考えられる。現在再灌流モデルで実験を継続中である。
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