研究概要 |
Dystrophin結合蛋白でcysteine rich domainやC端側で結合するものは多く知られているが、N端側やrod domainで結合することが知られているものは少ない。本研究では生化学的にdystrophinのN端と結合することが示されているcalmodulinや結合部位は未知であるが、結合するとされているtalin、aciculinに対する抗体を用いDuchenne筋ジストロフィー症(DMD)生検筋、多発筋炎、皮膚筋炎、神経原性筋萎縮性生検筋などの疾患対照筋、正常骨格筋を光顕免疫染色し検討した。その結果calmodulin,talin,aciculinでは免疫染色性が著減していた。尚、aciculinはBelkin.AMらによるJ Cell Sci 107:159-173,1994のaciculin peptide fragment DのC端12残基(DKSFIGQQFQVG)を合成しN端にcysteineを付加しthyroglobulinをハプテンとして付け、ウサギにて抗血清を作製した。抗calmodulin抗体は市販のウシ脳カルモデュリンを抗原としてウサギに免疫し抗血清を得た。また抗talin抗体は市販のモノクロナル抗体を使用した。免疫電顕的検討では組織化学的に正常なヒト生検筋を細切し、(1)ウサギ抗aciculin抗体と羊抗dystrophin抗体及び羊抗spectrin抗体、(2)マウス抗talin抗体と羊の抗dystrophinと抗spectrin抗体、(3)ウサギ抗calmodulin抗体と羊の抗dystrophinとspectrin抗体の組合わせを1次抗体として、2次抗体は5nm、10nm金コロイド標識抗体を組合わせて標識し電顕にて観察した。(1)、(2)、(3)ともdystrophinとの組合わせの方がspectrinとの組合わせよりdoubletが多い印象でaciculinで行ったsingle blind法による統計的検討では、doubletの割合はaciculinとdystrophin,aciculinとspectrinでそれぞれ23.5±1.8(SE)、12.8±1.1(P<0.01)で統計的に有意にaciculinとdystrophinとの組合わせでdoublet形成が多かった。次にaciculinとdystrophinとの結合部位の検討ではdystrophinのN端部分、C端部分を認識するモノクロナル抗体と抗aciculin抗体との2重金コロイド標識標本を作製し電顕で検討した結果、N端、C端共に結合部位があるのではないかと思われた。Freeze-etch replicaの標本ではaciculin,dystrophinと考えられる細胞骨格が2重金コロイド標識されているのが、しばしば観察された。
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