研究概要 |
我々はラット中枢神経系に特異的に分布する分子量23,000のEF-ハンド型カルシウム結合蛋白質の一群,P23kファミリーを見いだした.これらはいずれも投射型神経細胞に分布し,受容体蛋白質のリン酸化の抑制を介して情報伝達効率を調節している可能性が示唆されている.そこで,遺伝性精神神経疾患や老化にともなう記憶障害との関連を追求することを目的として,P23kファミリー蛋白質のヒト遺伝子と染色体座の解析を進めている.本研究では,新たに得られた2種のヒト・cDNAクローンの解析と分布する染色体の解析を行った. ヒト・ヒポカルシンcDNAをプローブとして,緩やかな選別条件でヒト・脳cDNAライブラリーをスクリーニングした.全翻訳領域を含む新たな2種類のcDNAクローン(hHLP3とhHLP4と命名)を単離し,全塩基配列を決定した.hHLP3は,全長942bpで576bpの全翻訳領域を含み,139bpの5′上流領域,227bpの3′下流領域を含んでいた.翻訳される蛋白質は,191残基のアミノ酸からなり,カルシウム結合部位として4つのEF-ハンド構造を持ち,分子量22,135,等電点5.10,アミノ末端にミリスチン酸修飾を受けるカルシウム結合蛋白質と推定された.mRNAは約2kbで,臓器では脳にのみ発現しており,脳内では大脳皮質に特に強く発現していた.また,hHLP3遺伝子は第2染色体に存在していた.hHLP4は,全長1625bpで576bpの全翻訳領域を含み,395bpの5′上流領域,754bpの3′下流領域を含んでいた.翻訳される蛋白質は,191残基のアミノ酸からなり,カルシウム結合部位として4つのEF-ハンド構造を持ち,蛋白質部分の分子量22,201,等電点4.61,アミノ末端にミリスチン酸修飾を受けるカルシウム結合蛋白質と推定された.mRNAは約3.5kbで,臓器では脳にのみ発現しており,脳内では線状体,尾状核に特に強く発現していた.
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