研究概要 |
我々は神経系に特異的な新しいカルシウム結合蛋白質の一群を見い出し,P23kファミリーと命名し解析を進めている.本研究課題では,ヒトの新たなメンバーの探索を行い遺伝子解析から遺伝性精神神経疾患との関連性を追求することを目的とした.またマウスのメンバーについて遺伝子解析や遺伝子欠損マウスの作成などを行い,P23kファミリーの生理機能を総合的に追求することを目的とした. 平成8年度には,ヒト・脳cDNAライブラリーから新たな2種類のcDNA,HLP3,HLP4を同定した.HLP3とHLP4はともに191アミノ酸からなる4個のEF-ハンドモチーフとアミノ末端にミリストイル基付加の共通配列を持つ蛋白質であった.本年度は,ヒト組織でのノーザンブロット解析を行い,いずれも脳特異的に発現し,HLP3 mRNAは脳梁と脊髄を除いて広く脳全体に,HLP4 mRNAは大脳皮質と小脳に多く分布することを明らかとした.さらにヒト・ハムスター雑種細胞株DNAを用いたConcordance/Discordance解析を行い,HLP3遺伝子は第2染色体にHLP4遺伝子は第17染色体に存在することを明らかとした. ラット・ヒポカルシンcDNAを用いてマウス・白血球遺伝子ライブラリーからマウス・ヒポカルシン遺伝子を得た.転写開始点は翻訳開始点上流180b付近に複数あり,転写終止点は翻訳終止点の下流860bであった.マウス・ヒポカルシン遺伝子は3つのエクソンからなり約8kbにわたって分布していた.ヒポカルシン遺伝子は,マウス,ラット,ヒトで高度に保存されていた.マウス・ヒポカルシン遺伝子座をFISH法により第4染色体D2〜D3と決定した.この遺伝子座近傍にはEpileptic circulationとCribriform degenerationの2種類の神経疾患が報告されており,関連が期待される.
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