研究課題
前年までの研究では、筋萎縮性側索硬化症患者血中の抗電位依存性カルシウムチャンネル抗体がチャンネルのリガンド結合動態に与える影響を検討するための基礎実験として、(1)cAMPおよびaphidicholineによるVSC4.L(脊髄前角細胞株)の分化誘導に関する基礎的研究、(2)分化VSC4.1細胞における電位依存性カルシウムチャンネルの各α1サブユニットサブタイプの発現の有無に関する基礎的研究、(3)マウス中枢神経組織における電位依存性カルシウムチャンネルの各α1サブユニットサブタイプの発現、(4)筋萎縮性側索硬化症患者血清を用いた免疫沈降法による抗電位依存性カルシウムチャンネルα1サブユニット抗体の検出法の確立、を行ってきた。患者血中の抗電位依存性カルシウムチャンネル抗体がカルシウムチャンネルのリガンド結合動態に与える影響を評価するためには、各患者血中にどのサブタイプの電位依存性カルシウムチャンネルに対する抗体が存在するのかを知ることが必須である。各α1サブユニット特異的抗体を用いて、患者血清により免疫沈降されるチャンネルサブタイプを同定した。骨格筋α1Sを免疫沈降する抗体はALS患者19例中5例に認められた。この他の脳型のVGCCα1サブユニットに関しては、抗α1A抗体は7例/ALS19例、抗α1B抗体は4例/19例、抗α1C抗体は8例/19例、抗α1D抗体は7例/19例、抗α1E抗体は12例/19例で認められた。各抗カルシウムチャンネルサブタイプ抗体陽性患者と陰性患者組織におけるリガンド結合動態を比較することによって、これらの抗体がカルシウムチャンネルの構造に与える影響の評価が可能になる。