研究課題/領域番号 |
08670738
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
松山 知広 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (10219529)
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研究分担者 |
塩坂 貞夫 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 教授 (90127233)
磯 博行 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (80068585)
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キーワード | ニューロプシン / 海馬 / 記憶・学習 / 分子生物学 / 行動学 |
研究概要 |
ニューロプシンは海馬・扁桃体などの脳辺縁系に局在する新規のセリンプロテアーゼである。神経機能特にシナプスを介した情報伝達機構における神経プロテアーゼカスケードの観点から、ニューロプシンが記憶素子である可能性が考えられる。本研究ではニューロプシンと記憶・学習機能との関連性を検討する目的で、ニューロプシンmRNAに対するアンチセンス核酸の脳室内投与の行動テストに与える影響を検討した。 (方法)動物はBalb/cマウスを用いた。ニューロプシンcDNAから選択した15merのアンチセンスを作成し、アルザミニ浸透圧ポンプに接続した30G針を用いて2ug/ul/hの注入速度で脳室内投与した。コントロールとしては生理食塩水、センスとミスマッチアンチセンスをそれぞれ投与し、投与後2日目にオープンフィールドテストを施行した。オープンフィールドテストでは30 cm四方のオープンフィールドのX軸Y軸に設定された各々2本の赤外線ビームのマウスによる切断回数を測定し、20分間を一試行として活動性を算出した。行動テスト終了後これらの動物の脳を摘出し、海馬内ニューロプシン蛋白濃度を免疫沈降法と合成基質発光法により測定した。 (結果)アンチセンス投与マウスは一試行中の平均ビーム切断回数が220回であり、生理食塩水、ミスマッチアンチセンス、センス投与マウス(各々140、130、150回)に比し、有意に活動性が亢進していた(p〈.05)。アンチセンス投与マウス海馬のニューロプシン濃度は0.11ng/mgであり、センス投与マウスの0.21ng/mgに比して有意に減少していた(p〈.05)。 (考察)海馬ニューロプシンの減少がマウスの行動変化をもたらすことが明かとなった。オープンフィールドによる活動性の亢進は海馬障害時によくみられる現象である。ニューロプシンが海馬辺縁系に特異的なプロテアーゼであることを考えると、記憶学習等の海馬機能の維持にニューロプシンが重要な役割を果たしていることが示唆された。
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