研究課題/領域番号 |
08670745
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研究機関 | 国立精神・神経センター |
研究代表者 |
武田 伸一 国立精神・神経センター, 神経研究所・遺伝子工学研究部, 室長 (90171644)
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研究分担者 |
小林 慶 国立精神, 神経センター・神経研究所・遺伝子工学研究部, COE特別技術者
宮越 友子 国立精神, 神経センター・神経研究所・疾病研究第一部, COE特別研究員
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キーワード | 原発性セルロプラスミン欠損症 / セルロプラスミン / 銅結合蛋白 / 鉄代謝 / フェリチン / 活性化酸素 / 神経細胞死 / 鉄沈着 |
研究概要 |
常染色体劣性の遺伝形式を示し、中年以降にWilson病に類似した不随意運動、肝硬変、糖尿病の症候を呈し、血清のセルロプラスミンの著減する原発性セルロプラスミン欠損症の家系について、我々はセルロプラスミン遺伝子の点突然変異により、スプライシングの異常を介してストップコドンを生じ、C端の欠失したセルロプラスミンが翻訳されるが、銅結合部位を欠くために速やかに肝臓内で崩壊することを明らかにした。本症では、セルロプラスミンのフェロオキシデ-スとしての活性が欠如するために、2価の鉄が3価に酸化されず、組織鉄としてのフェリチンの基底核、肝、膵を中心とした沈着が観察される。一方では、比較的大型の神経細胞の変性と脱落が認められるが、その背景として、鉄沈着による障害の他にセルロプラスミンが活性化酸素の除去機構に関与しているために、活性化酸素による組織障害として、神経細胞の細胞死を招いている可能性がある。そこで、セルロプラスミン欠損による鉄代謝の異常に伴う神経細胞死の機構を明らかにするために、セルロプラスミン遺伝子ノックアウト・マウスを作出し、鉄代謝、活性化酸素と、神経細胞死との関連を詳細に検討することを試みた。最初に、マウス・セルロプラスミン遺伝子のATGを含むexon部分をdeleteし、代わりにNeo耐性遺伝子とnegative selectionのためにtk遺伝子を挿入したターゲティング・ベクターを作製した。次に、同ベクターをelectroporation法を用いて、既にgermline transmissionに関して実績のあるES細胞に導入し、相同組換えを起こしたクローンのみをPCR法及びSouthern blot法を用いてスクリーニングした。現在、約10個の相同組み換え体を得て、マウス胚盤胞への注入によるキメラマウスの作出へのステップに移っている。今後、キメラマウスを得ることができたならば、ワイルドマウスと掛け合わせてヘテロマウスを得、更にヘテロマウス同士の交配によりホモマウスを作出して、表現型の解析に着手したいと考えている。
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