研究概要 |
本年度の研究計画に基づき、麻酔開胸犬を用いた、心交感神経刺激時の陽性変力作用に対する、NO合成酵素阻害剤(Nω-NitroL-arginine methlester=L-NAME)投与の影響を検討した。左室dp/dtを左室収縮力の指標として、心交感神経刺激時の左収縮力の変化を検討した。心交感神経刺激は左星状神経節を5V/2,5Hz,5V15Hz,5V/10Hz,10V/10Hzの各刺激条件で電気刺激を行い、L-NAME投与前、投与後を比較検討した。L-NAME投与は心交感神経刺激による陽性変力作用を各刺激条件下で増強する事、これらの変化はNOの基質であるL-arginine投与により拮抗される事が示された。これらのデータの一部は、平成8年度、第60回日本循環器学会総会において「心交感神経による左室収縮及び拡張の調節に対するNO合成系の関与」と題して報告した。次に心房収縮力に関する検討を行ったが、心房発生圧が低圧であるため、左房dp/dtの交感神経刺激時の変化は微小であり、L-NAME投与前後での左房dp/dtの変化は極めて小さく、L-NAMEの投与による心房変力作用への影響は検討が困難であった。実験方法、対象の修正が必要か検討中である。本年度は、心交感神経刺激時の左室収縮力に関するNO合成酵素阻害剤及びL-arginineの効果について、第60回日本循環器学会での発表内容に追加実験のデータを追加、"Nitric Oxide Modulates Sympathetic Control on Left Ventricular Contraction in Vivo"と題した論文にまとめ、現在"Journal of the Autonomic Nervous System"に投稿中である。
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