研究概要 |
AVPの血管平滑筋細胞の増殖作用に関し種々の異なる報告があり、機序も含め不明な点が多い。今回、ラット大動脈血管平滑筋細胞(RASMC)、胎児ラット由来血管平滑筋細胞株(A10)のAVPによる増殖作用、及びその機序を検討し、血管平滑筋細胞におけるAVPの局所発現を検討した。【方法】RASMC、A10を用いAVPによる細胞増殖を細胞数、DNA合成を測定し評価。プロスタノイドの関与を検討するため培養溶液中のPGE2等をRIAで測定。また、AVPの局所発現を、血管平滑筋細胞より抽出したmRNAを用い、RT-PCR法、PCR産物のシークエンスの解析、及びノーザンプロット解析にて検討した。【結果】RASMCは、AVP濃度依存的に有意な増殖促進を示したが、A10では有意な増殖抑制を示した。A10をIndomethacinで処理したところ、AVP濃度依存的に有意な増殖促進を示した。培養溶液中のPGE2,6-keto-PG F1α,TX B2濃度は、A10ではRASMCに比べAVP濃度依存的に有意な高値を示した。V1受容体拮抗剤OPC21268は用量依存的に、AVPによる上記の全ての作用を阻害したが、V2拮抗剤OPC31260の関与はなかった。また、RASMC、A10より抽出したmRNAを用いRT-PCR法により得られたPCR産物のシークエンスを解析した結果、AVPに一致した。ノーザンブロット解析においてもAVPのバンドが検出された。【総括】AVPはV1受容体を介し、細胞増殖促進作用を有するが、同時にプロスタノイド産生作用も併せ持ち、A10においては、後者が優位な為、細胞増殖抑制効果をもたらす。血管平滑筋細胞からのAVPの局所発現が強く示唆され、オートクリン、パラクリン的に細胞増殖に関与していると考えられた。
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