急性冠血管症候群(acute coronary syndrome:ACS)の病態研究と我々の開発した新型の穴あきバルーンカテーテルの臨床応用への発展を試みた。基礎研究では組織因子やトロンビン系列が血管壁内局所凝固に重要な役割を担っていることが示唆された。また、増殖した内膜層の血管平滑筋細胞(VSMC)には血小板内に発現するPDGF-B chain(血小板由来増殖因子)とAD-1抗原(血小板活性化の指標となる表面蛋白CD63に相当)が認められ活性化した血小板に類似した性格をもつことが示唆された。抗トロンビン剤局所投与によりその発現を阻止し安全かつ有効な内膜肥厚抑制が可能であることが示唆された。局所的にこれらの活性を抑制することにより急性冠血管症候群の治療が可能と考えられた。現在我々は動脈硬化進展における役割を解明するため肥満細胞中キマーゼなどアンギオテンシンII合成促進物質を同定中である。ACSの症例において血小板活性物質が冠動脈プラーク組織内のVSMCで高度に発現している事が確認された。また、このような「活性化」VSMCの増殖にはACEではなくキマーゼを介するアンジオテンシンの産成が関与している可能性がある。また、新型の穴あきバルーンカテーテルによる抗血栓剤少量局所投与法は出血傾向をもたらさず急性冠血管症候群を治療できる可能性が示唆され、実際の臨床応用でも実証された。また、局所遺伝子治療は急性冠血管症候群治療の有力な手段となる事が期待される。
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