研究概要 |
【目的】直流通電による除細動時には心室各部の心筋が数V/cmから約100V/cmにまで至る様々な強さの電界に曝される。本研究では、それらの電界が心室筋細胞の脱分極と再分極に及ぼす作用を解明するため膜電位感受性色素を用いた活動電位光シグナル計測装置を開発し、潅流心を用いた実験で検討した。 【方法】ウサギ摘出心を膜電位感受性色素(di-4 ANEPPS,2μM,10min)により染色した後、左室心外膜面の一部に高輝度発光ダイオードを内蔵したoptical probeを当て、径2mmのスポットに光(中心波長450nm)を照射した。同部位から光りファイバー束を用いて蛍光を集め、long pass filter(カットオフ波長580nm)を介してphotodiodeに入力し、膜電位光シグナルを観察した。Optical probeの両側には直流通電(S2,10ms)用の電極を装着した。 【結果】基本刺激(S1)による活動電位のプラトー相で電界強度(FI)7V/cm以上のS2を加えると再分極が遅延し、S1+S2活動電位の持続時間(APD)が延長した。このAPD延長はFIに依存して増大した。FIが12V/cm以上になると、S2後の再分極が不完全となり持続性の静止電位減少が生ずるとともに、S2後のS1活動電位振幅が1〜3分間にわたって減少した。これらの後作用はFIが増す程著しくなった。S2後の第一拍目S1活動電位振幅を50%減少されるFIは平均44,5V/cmであった。(n=6)。 【総括】左室心外膜面に直流通電を加えると電界強度に依存して(1)APD延長と(2)持続性の静止電位減少及び活動電位振幅減少が生じた。前者は不応期延長を介してエントリ-停止に寄与する変化であり、後者は可逆性の膜破壊(electroporation)による心筋細胞障害を反映する現象と考えられる。
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