研究概要 |
本研究では生理活性をもつリン脂質リゾフォスファチジルコリン(LPC)による培養血管内皮細胞での遺伝子発現に関わるシグナル伝達機構の解明を進めている。本年度の研究では、LPCによる遺伝子発現は蛋白チロシンリン酸化に依存すること、さらに抗リン酸化チロシン抗体によるイムノブロットにて分子量約130kDaの膜分画に存在する蛋白がLPC刺激により速やかに(15分-1時間後)チロシンリン酸化することが示された。このLPC刺激により速やかにチロシンリン酸化される蛋白を同定するため、分子量が約130kDaであるfocal adhesion kinase(FAK),p130Casなどの単クローン抗体を用いて、抗リン酸化チロシン抗体にて免疫沈降された蛋白をイムノブロットしたところバンドは検出されなかったが、抗PECAM-1抗体にて130kDaのバンドが認められた。順序を変えて、先に抗PECAM-1抗体にて免疫沈降された蛋白を電気泳動し抗リン酸化チロシン抗体にてイムノブロットしたところ同様に130kDaのバンドが検出された。以上より、培養ウシ大動脈内皮細胞においてLPCはPECAM-1を速やかにチロシンリン酸化することが明らかとなった。最近ずり応力といた物理的な刺激を加えることにより、同様のPECAM-1のチロシンリン酸化が報告されていることなどから、PECAM-1のチロシンリン酸化がLPCによる培養血管内皮細胞でのシグナル伝達に重要な役割を担う可能性が示唆された。
|