研究概要 |
【目的】高血圧性血管病変は退行性病変が主体となる血管壊死と細胞線維性肥厚を主体とする硬化性変化に分けられる。この違いが生じてくる理由を解析する目的で、脳卒中易発症高血圧ラット(SHR-SP)を用いて、免疫組織学的染色を行い、細胞外マトリックスとマクロファージの果たす役割について検討を加えた。 【方法】生後20週令までのSHR-SPと正常血圧ラットを屠殺し、脳、腎臓、心臓、大動脈から標本を摘出し、パラフィン切片あるいは凍結切片を作成した。一般的組織染色に加えて、α-アクチン、コラーゲン、PCNA,ED1(単球・滲出マクロファージ),ED2(在住マクロファージ)、OX1(MHC class II),CD4,CD5,CD8(Tリンパ球)に対する特異抗体を用い、免疫組織学的染色を行った。 【結果】SHR-SPでは16週以後のラットの脳に出血、梗塞を伴った広範な脳浮腫を認めた。血管病変は頭頂葉を中心にした皮質領域に多く認められ、小・細動脈レベルの血管には血管壊死が多発し、その周囲には炎症細胞の浸潤を認めた。免疫組織学的には、12週からα-actinの染色性低下と血管周囲のED2陽性存在マクロファージの減少が認められ、16週以後では存在マクロファア-ジは消失して血管壊死が認められた。又、単球に由来するED1陽性滲出マクロファージは、血管壊死病変の周囲に多数浸潤していた。腎臓では12週の小葉間動脈においてα-actinの染色性低下とMHC classII陽性の滲出マクロファージ、Tリンパ球の集積が血管周囲に認められ、16週以後では外膜側からの炎症細胞の浸潤とともにPCNA陽性細胞と細胞線維性肥厚が多数認められた。 【結論】脳と腎臓で認められた高血圧性血管病変の性状の違いは、病変形成早期における免疫学的に活性化されたMHC classII陽性の滲出マクロファージの動員様式が臓器によって相異があることが関連している可能性があると考えられた。
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