(1)家兎を普通餌又はコレステロール含有餌下に飼育し、胸部下行大動脈にステンレス製ステントを留置した。術後2ケ月まで経時的に屠殺し、細胞外マトリックス(ECM)成分とマクロファージに対する免疫染色を行い、肥厚内膜における平滑筋細胞(SMC)のフェノタイプとの対比検討を行った。さらにデコリン、バイグリカン、TGF-β及びIL-1βの遺伝子の発現動態をin situ hybridization法で検討した。その結果、新生内膜におけるECMは内膜の構成成分としてばかりでなく、デコリンやバイグリカンなどのECM成分はTGF-βとの相互作用を介してSMCの増殖やフェノタイプの変化と機能的な連関があり、内膜肥厚の進展に関与していること、又、デコリンの発現はマクロファージの集積動態と関連があることが示唆された。 (2)脳卒中易発症高血圧ラット(SHR-SP)を用いて免疫組織学的染色を行い、高血圧性血管病変の形成過程を検討した。生後20週令までのSHR-SPを屠殺し、脳、腎臓から標本を作成し、PCNA、ED1(単球・滲出マクロファージ)、ED2(在住マクロファージ)、OX1(MHC class II)、CD4、CD5、CD8(Tリンパ球)に対する免疫組織学的染色を行った。16週以後の脳には出血、梗塞を認め、血管病変は皮質の小・細動脈レベルの血管には血管壊死が多発し、炎症細胞の浸潤がその周囲に認られた。免疫組織学的検討から、脳と腎臓で認められた高血圧性血管病変の性状の違いは病変形成早期における免疫学的に活性化されたMHC classII陽性の滲出性マクロファージの動員様式が臓器によって相異があることが関連している可能性があり、脳血管周囲に存在している在住マクロファージは、高血圧性病変の進展とともに減少、さらに消失していた。
|