平成8年度には自律神経系の温存された犬交叉潅流心において房室結節の生理的機能を不規則な白色ノイズ刺激を与える事により検討し、機能的不応期が連続的先行RR間隔の変化に連動して変わる事を報告した。平成9年度は動物実験での房室結節の生理的機能をふまえてヒト心房細動における変行伝導と心室期外収縮の鑑別が可能である事、また、その定量的鑑別法について検討した。平成10年度はさらに心房細動に心室期外収縮を合併した症例において心室期外収縮の詳細な検討を行った。対象は81例で弁膜症などの基礎心疾患を合併していた。ホルター心電図のRR間隔時系列データのRRnをX座標、RRn+1をY座標として二次元図形表示し、心室期外収縮と変行伝導の二次元図形パターンの違いから各々の不整脈を診断した。心室期外収縮の連結時間の違い、発生時の先行RR間隔の違い、および不整脈の悪性度や心機能などの臨床的指標との関連を検討した。心室期外収縮の連結時間は非常に連結時間の固定したものから変動するものまで混在し、連結時間の変動する症例ほど不整脈の悪性度が高く、心室頻拍などがみられた。また、心室期外収縮の発生時の先行する2つのRR間隔が最初に短く、次に長いRR間隔がくるという規則性があって心室期外収縮が出現するものと全く不規則なRR間隔の関係のものまでみられ、不規則な症例において心室頻拍などのような、より悪性の不整脈が出現していた。心機能もこのような症例において低下していた。このように本法は一見カオスと思われる心房細動のRR間隔と心室期外収縮の発生において規則性を解析するのに有用な方法であることが解った。また、心室性不整脈の発生機序を考える上でも有用な方法である。
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