心筋反応性充血の機序に内因性一酸化窒素を介する血管拡張が重要であることを報告した。本研究では代謝性冠血流調節に対する内因性一酸化窒素の役割を明らかにするために、心房ペーシングに伴う心筋酸素消費量増加時の冠血流量と心収縮性の変化を一酸化窒素の急性および慢性阻害前後で検討した。一酸化窒素合成酵素阻害剤(LNAME)の冠動脈内投与による急性モデル犬における検討では、心筋酸素消費量増加の冠血流増加作用(代謝性冠血流増加)は一酸化窒素阻害前後で変化なかった。アデノシンの作用を8フェニルテオフィリン(8PT)でブロックすると、一酸化窒素阻害後の代謝性冠血流増加は抑制され、心筋収縮の抑制が認められ、さらに心筋乳酸摂取率が有意に減少した。以上より内因性一酸化窒素を急性阻害しても代謝性冠血流調節は保たれるが、アデノシンの代償作用が重要となることが明らかになった。一方、LNAMEの経口投与による慢性一酸化窒素阻害モデル犬における検討では、心房ペーシングに伴う心筋酸素消費量増加時の冠血流増加、心筋収縮、乳酸摂取率は対照群(LNAME非投与群)と差がなかった。慢性阻害群の基礎心筋アデノシン放出は亢進しており、アデノシンの作用を8PTによりブロックすると慢性阻害群において冠血流増加、心筋収縮が有意に抑制された。対照群では8PT投与にても変化がなかつた。以上より慢性的一酸化窒素阻害時においても代謝性冠血流調節にアデノシンノ代償的役割が重要となることが示された。
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